Update

- 2025/07/23
- UPDATE01
第16回 日本プライマリ・ケア連合学会 学術大会に参加して【学会参加助成制度を利用】
(研修医2年目 村上)
プライマリ・ケア学会に参加するとき、私はいつも講演よりも企業ブースやポスター発表を中心に回るようにしています。
講演は多くがあとからオンデマンドで視聴できますが、ポスターやブースでの体験はその場限りであり、直接話を聞いたり雰囲気を感じたりできる貴重な機会だと感じているからです。
今回もいくつかのポスターを写真に収めて、あとから見返していたところ、ある共通点に気づきました。
それは、「キュア(治療)」よりも「ケア(支援)」に焦点を当てていたということです。
「病気をみるのではなく、人をみる」という言葉は、医療の世界ではよく耳にします。
私はこれまで、「人をみる」とはどういうことなのか、折に触れて考えてきました。
「性格を考慮すること」「その人のやりたいことを尊重すること」――これらも「人をみる」の一つの在り方だと思います。
「最後に海を見たい」「思い出の地を訪れたい」といった願いを叶える取り組みは素晴らしく、自分自身も感銘を受けることが多いです。
ただ一方で、6月に1ヶ月間地域で研修をして、実際に患者さんと関わる中で多く耳にしたのは、「できれば最後まで自分でトイレに行きたい」「自分の口でご飯を食べ続けたい」といった、もっと生活に根ざした言葉だったと感じています。
つまり、「やりたいこと」とは、感動的なエピソードよりも、日々の暮らしの中にこそあるのではないか――そう思わされることが多くありました。
そう考えると、「人をみる」とは、すなわちその人の「生活をみる」ことなのではないかと思うのです。
今回のポスター発表の中では、たとえば「医療現場におけるメイクセラピーの可能性」や「地方在住高齢者の移動・運転に関する話し合いと意思決定支援」の取り組みが特に印象に残りました。
メイクセラピーは、がん患者さんや認知症の方に対して、外見の回復を通じて自己肯定感や活動意欲を取り戻す支援として紹介されていました。
メイクという行為は、一見「余裕のある人の楽しみ」に見えるかもしれませんが、実は「自分の手で自分の顔を整える」ことができるという意味で、ADL(日常生活動作)のひとつであり、自己決定の一環でもあるのかもしれないと感じました。
また、アドバンス・カーライフ・プランニングのポスターでは、免許返納を一律に促すのではなく、「健康な時からどのように安全運転ができる期間を伸ばしていくか、返納後どのように住み慣れた地域で暮らすか」について本人などと話し合う取り組みが紹介されていました。
「移動」という生活機能をどう支えるかという視点で、本人の役割や希望を尊重する意思決定支援の重要性が語られていました。
これもまた、生活の中にある「その人らしさ」に寄り添うケアであると感じました。
プライマリ・ケア学会には、治療の知識だけでなく、「生活を支える技術」や「その人らしさに寄り添う工夫」が詰まっているといつも感じます。
医療とは、単に数値を整えることではなく、患者さんの生活を整えることであり、それこそが、プライマリ・ケアの醍醐味だと思います。